らんぼ~流 山屋の視点
サイトマップ らんぼ~流イチ押しの厳選アイテムショップ
画像投稿掲示板
第2回ビバーク演習 (牧ノ戸~久住山~坊ガツル~久住山避難小屋~牧ノ戸 2010.1.1-2)

 昨年、ふとした思いつきから始めることになった冬季ビバーク演習。
 その第1回目は見事に敗退したわけだが、この方面に関しては懲りるということを知らないらんぼ~流。
 前回の経験から装備に変更を加え、新年早々、第2回冬季ビバーク演習を行うことにした。
 折りしも2010年の正月は日本全土に強烈な冬の嵐が吹き荒れる模様である。
 「これはまた、年末年始の間に相当な数の遭難者が出るなあ・・・」
 一年に数度しかない大型連休。
 天気が荒れるとわかっていても、勤勉な山屋諸氏の多くは山へと向かうに違いない。
 かくいうらんぼ~流もこの正月休みを使って前回のリベンジをしようと決めていた。
 「充分だ、リベンジするには充分だ・・・」
 ちょうど10日前に別府市の内山に向けたその言葉を僕は覚えず呟いていた。
 そして、時ならぬ、冬の嵐の到来にひそかに闘志を燃やすのであった ――
■出撃前夜(今回の装備について)  >>>開く
ほんの一瞬、ガスの中から久住本峰が姿を現した。
■1日目 [その1]
牧ノ戸~久住山~坊ガツル

 2010年元旦 ――
 僕は朝食代わりの雑煮を慌しく平らげると、午前9時27分に自宅を出た。
 演習場所は第1回目と同じく坊ガツルキャンプ場である。
 今回は前回の反省を元にいろいろと対策を講じているが、その分、天候等の条件は前回よりもかなり悪い。
 演習で本当に遭難して世間様を騒がすわけにはいかないので、今回もすぐそばに安全な避難場所があることを目的地選定の最優先事項とした。
 また、演習の前段階で登る山は、2010年最初の山ということもあり、山系盟主の久住山に決めた。
 11時14分、牧ノ戸駐車場に到着。
 最初からレインウェアとアイゼンを装備、入念に準備を整えて、11時54分に牧ノ戸登山口を出た。
 「う~む。初っ端からすごいな、これは・・・」
 いつもは登山者に混じってスニーカー履きの観光客も行きかう沓掛山の遊歩道が、今日はその入口からガチガチに凍りついている。
 滑り止めをしていない靴で歩くことは困難だろう。
 道の両側の樹木についている霧氷もかなりの大きさまで成長している。
 「こいつは上の方はとんでもないことになっているかも知れないなあ・・・」
 期待半分、不安半分、というやつだ。
 沓掛山の山頂を過ぎ、久住山に続く登山道に入ると、目の前に見渡す限りの雪景色が広がった。
 吹雪いてはいないが、視界はかなり悪い。
 しかし、このコースは久住分れを過ぎるまでは道がはっきりとしているので、少々ガスっても道迷いの心配はない。
 しばらく歩いていると、星生山に至る分岐を過ぎたところでいきなり目の前に青空が広がった。
 その瞬間、雪をかぶった久住本峰がその雄姿を現した。
 「うおお ――
 正月早々、このように神々しい姿の久住山を見れる幸運はそんなにはなかろう。
 ここまで来た甲斐があるというものである。
 興奮してカメラのシャッターを数回切るうちに視界は再びガスに閉ざされた。
 山頂付近はかなり強い風が吹いているらしい。
 13時37分、久住分れを通過。
 この先はだだっ広い斜面が広がっているだけなので、視界が悪いと本来の登山道から外れる恐れがある。
 地面に張ってあるロープと黄色のマーカーを頼りに少しずつ高度を上げていく。
 14時13分、久住山頂に到着。
 久しぶりの元旦登山なので、らんぼ~流にしては珍しく、登頂記念の写真を撮った。
 山頂の気温はマイナス10℃。
 生憎、風速を測る道具は持ち合わせていないが、傘を差して歩けるような生半可な風ではないから、少なく見積もっても風速10メートルを超えていると思われる。(注1)
 となれば、体感温度(注2)はマイナス20度を下回っているはずだ。
 しかし、今回はウェア・レイヤリングに気を配っているのでそれほど寒さは感じない。
 やはり、装備とは偉大である(^^b
 頂上に着く少し前から上空が明るくなっているので、ガスはそれほど厚くないだろう。
 カメラを片手にしばらく待っていると、再び視界が開け、中岳や稲星山などくじゅう連山の名立たる峰々が次々に姿を現していった。
 15分ほど山頂に滞在してから下山開始。
 再び、久住分れに戻り、北千里浜を通って坊ガツルキャンプ場に向かう。
 北千里浜では面白い光景を目にすることができた。
 人の歩いた足跡が地面より盛り上がった形で残っているのだ。
 風の通り道である北千里浜は降り積もった雪が強い風によって吹き飛ばされるだが、風のない時に積もった雪の上を人が歩くと、その部分だけが強く踏み固められる。
 その後、風が吹くと、踏み固められた部分を除いて雪が吹き飛ばされるので、このような造形ができあがるのだ。
 16時2分、坊ガツルキャンプ場へ到着。
 これより、第2回くじゅう冬季ビバーク演習に突入する。
  • 注1)風速:空気が風として移動する速さのことで測定には風速計が使用される。風速計がない場合はビューフォート風力階級などを基に、地物または海面の状況から判断した風力により風速を推定する。ちなみに同風力階級によると、傘が差しにくくなる風力は階級6の雄風と呼ばれ、そのときの風速は10.8~13.8m/sである。
  • 注2)体感温度:人間の肌が感じる温度の感覚を数値として表したもの。体感温度の算出方法には、湿度に着目したミスナールの式と風速に着目したリンケの式が存在し、リンケの式によると風速が1m/s増すごとに約1℃ずつ低下する。
(文・山岡隊員 、写真及び写真説明・山岡隊員)
瀬ノ本交差点付近 牧ノ戸峠に向けて雪道をひた走る 牧ノ戸峠に到着
瀬ノ本交差点付近 (10:42)
タイヤにチェーンを巻くのは久しぶりだ。
牧ノ戸峠に向けて雪道をひた走る。
白い雪道に否が応でも期待が高まる。
牧ノ戸峠に到着 (11:14)
ここの標高は1330メートル。
行軍開始 少し登った場所にある東屋 ガチガチに凍った沓掛山の木段
行軍開始 (11:54)
入念に準備を整えて、いざ出撃♪
少し登った場所にある東屋 (12:06)
今日はさすがに寛いでいる人はいない。
ガチガチに凍った沓掛山の木段。
すでにアイゼンを履く登山者の世界だ。
沓掛山の山頂を過ぎると、目の前に一面の銀世界が広がった 扇ケ鼻分岐 星生山分岐
沓掛山の山頂を過ぎると、目の前に一面の銀世界が広がった。 扇ケ鼻分岐 (12:58)
今回は寄り道せずに久住山へ向かう。
星生山分岐 (13:15)
ここも無視して、まっすぐ進む。
濃いガスの中、ほんの一瞬、雪をかぶった久住本峰が姿を見せた 再び、ガスに視界を閉ざされる 久住山避難小屋
濃いガスの中、ほんの一瞬、雪をかぶった久住本峰が姿を見せた(^^ 再び、ガスに視界を閉ざされる。
写真中央、僅かに避難小屋が見える。
久住山避難小屋 (13:34)
立ち寄らず、そのまま久住山山頂へ。
久住分れ 見通しが利かないため、地面を這うロープとマーカーだけが頼りの登りが続く 中岳への分岐
久住分れ (13:37)
ルートを見失わないように慎重に進む。
見通しが利かないため、地面を這うロープとマーカーだけが頼りの行軍が続く。 中岳への分岐 (13:50)
視界はほんの数メートルしかない(汗
最後の急登にさしかかったとき、少し空が明るくなってきた 久住山山頂に到着 山頂でガスの切れ目を辛抱強く待つ
最後の急登にさしかかったとき、少し空が明るくなってきた。 久住山山頂に到着 (14:13)
誰もいない山頂を一人占めだ(^^v
山頂でガスの切れ目を辛抱強く待つ。
ほんの一瞬、下界が見えた。
中岳、天狗ケ城の雄姿が浮かぶ 山頂付近の霧氷 山頂の気温はマイナス10℃
同じく山頂からの展望。
中岳、天狗ケ城の雄姿が浮かぶ。
山頂付近の霧氷。
ここまで成長すると、別のモノに見える。
山頂の気温はマイナス10℃。
風が強いので、体感温度はさらに低い。
再び、久住分れ 北千里浜への道 久住分れ北面の岩塊
再び、久住分れ (14:50)
次は北千里浜を経て、坊ガツルに下る。
北千里浜への道。
吹き溜まりでは太ももまで雪に埋まる。
久住分れ北面の岩塊。
雪と岩のコントラストが迫力を増す。
ガスの中、前方に三俣山が姿を現した すがもり越への分岐 人が踏み固めた足跡だけが風に飛ばされずに残り、このようなオブジェを作る
ガスの中、前方に三俣山が姿を現した。
このあたりから天候が安定してきた。
すがもり越への分岐 (15:23)
無視して、坊ガツル方向へ北進する。
人が踏み固めた足跡だけが風に飛ばされずに残り、このようなオブジェを作る。
北千里浜終点 雪をかぶった大船山 同じく雪をかぶった平治岳
北千里浜終点 (15:36)
坊ガツルキャンプ場が見えてきた。
真っ白に雪をかぶった大船山。
次回の演習時はここに登ってみよう(^^
同じく雪をかぶった平治岳。
ま、そのうちに・・・w
法華院温泉山荘 法華院温泉山荘と三俣山 坊ガツルキャンプ場に到着
法華院温泉山荘 (15:49)
もちろん、元旦から営業している。
法華院温泉山荘と三俣山。
とても絵になる構図である(^^b
坊ガツルキャンプ場に到着 (16:02)
これより第2回ビバーク演習を始める。
-らんぼ~流イチ押しの厳選アイテム-
■LEKI(レキ) AGサーモライトアンチ■
トレッキングステッキの老舗レキの衝撃吸収システムを搭載したスタンダードモデル。最近では他メーカーから安価な製品が発売されているが、時に命を預けることのある装備にはある程度の予算をかけておくべき。同社の製品にはさらに軽量のカーボンモデルもあるが、カーボンは一旦傷がつくと脆そうなのでアルミ素材のものが安心。

ご購入はこちらから >>>  

-らんぼ~流イチ押しの厳選アイテム-
■BlackDiamond(ブラックダイヤモンド) コンタクト ストラップ■
ブラックダイヤモンドのヒット作。気軽に携帯できる軽量コンパクトな10本刃モデルのクランポンで汎用性の高いストラップ式のためミッドソールの柔らかいブーツにも装着可能。ウェブの情報ではトレイルランニングシューズにつけている人もいるという。遮雪性、密閉性の高いABS(アンチスノープレート)を標準装備。

ご購入はこちらから >>>  

第2回冬季ビバーク演習開始。
■1日目 [その2]
ビバーク演習(坊ガツル)

 この日、坊ガツルキャンプ場にはすでに数張のテントが設営されていた。
 すべてソロ用のテントだったが、配置を見るとどうやらグループで来ているらしい。
 僕はすでに野営準備を整えている彼らに型通りの挨拶をすると、素早く周囲の状況を見てとった。
 ザックのサイドポケットに差し込んでいる温度計によると、現在の気温はマイナス6℃。
 風もそれほど強くはない。
 地面には約10センチの積雪があり、おかげでほとんど整地の必要はないだろう。
 最も身近な避難場所である管理休憩舎にはすでに先客がテントを張っているが、前回と違い、向こうもソロのようだ。避難の必要が生じれば、最悪、同宿することも考慮に入れておこう。
 「さて、どこにツエルトを張ろうかなあ ――
 適当に辺りを物色していると、先ほどまでテントが張られていたようなテントサイトの跡を発見した。
 雪の上に枯れ草を敷き詰め、防寒対策をしている。
 「う~む、手馴れたもんだなあ」
 こちらも負けてはいられない。
 悩んだ結果、リベンジということを考えて、前回と同じ場所にビバークすることに決めた。
 16時41分、ツエルトの設営完了。
 少しばかり不恰好だが、今回はトレッキングポールを使って設営することができた。
 前回の失敗を反省して、毎日寝る前にロープワークを練習していた成果である(^^
 設営後、ツエルト内に荷物を搬入。
 MPIのオールウェザーブランケットを二重にしてツエルト底面に敷きつめ、さらに背中にあたる部分に今回新しく装備に加えたモンベルのエアマットを敷いた。
 これで地面からの冷え対策は万全のはずだ。
 「よし、ここまでは順調だ・・・」
 ザックの中から荷物を引っ張り出し、すべて床にぶちまける。
 らんぼ~流の購入したエアマットは長さが90センチしかないので、最終的にはザック本体も足の下に敷きこんで地面からの断熱に使う必要があるのだ。
 荷物を整理していると、突然、異様に冷たい物質が手に触れた。
 「 ―― むあっ、凍ってやがる」
 それは非常用食料アークIIIのウォーターパックだった。
 「う~む。そうだった・・・ここは雪山だった・・・」
 以前、隊長と一緒に登った厳冬期の由布岳登山で一度経験していたにも関わらず、今回も水の管理が疎かになっていた。
 雪山にあまり馴染みのないらんぼ~流は、このあたり、どうしても脇が甘くなってしまう。
 この分では2リッター入りのペットボトルの水もやがて完全に凍ってしまうだろう。
 今回はすぐそばに炊事棟があるから水には不自由しないが、今後、液体の水が補給できないような場所でビバークする場合は、ペットボトルをシュラフカバーの中に入れるなど凍らないような工夫を考えておく必要がある。
 順調だと思っていた矢先に自身の経験不足を思い知らされた出来事であった。
 さて、荷物の整理をしているうちに完全に日は落ちてしまっていた。
 秋の陽はつるべおとしというが、冬のそれも同じだ。
 気がつくと、ヘッドライトの明かりなしでは何もできなくなっていた。
 カメラの小型三脚にサブのヘッドライトを装着して、ランタンの代わりにする。
 らんぼ~流の愛用しているサブライトは10年以上前に購入したペツル社の初代ジプカで、現在発売されている同系列のモデルと比較すると、とても暗い代物である(^^;
 山中の夜間行軍に使用するにはあまりにも頼りないが、光量が少ない分目に優しく、また電池交換なしで長時間駆動するのでビバーク時の常夜灯には向いている。
 17時55分、その明かりの中で夕食をとる。
 夕食は予定通り、非常用食料アークIIIだ。
 「う~む、かなり硬いな」
 たしかに硬いが、歯が立つと口の中でぼろりと砕けた。
 やはり出発前に感じた印象は正しかったようだ。
 適度に湿っていて、硬いが、一定以上の力が加わると一気に崩壊する。
 匂いにわずかな酸味があるが、味の方は特に酸っぱいわけではなく適度に甘みがある。
 特徴的なのは食感で、口の中でほとんど溶けていくのだが、最後にじゃりじゃりとグラニュー糖の粒を噛みしめているような妙な歯応えが残る。
 決して不味い代物ではないが、積極的にもう1つ食べたいと思うような味ではない。
 こう書いてしまうと身も蓋もないが、しかし、ついつい次の1個に手が伸びるような食べ物は非常食には向いてなかろう。
 その意味ではとても優秀な非常食と言える。
 アークIIIは1個で充分なので(w)、酒を飲みながらバナナチップスをつまんで夕食を終えた。
 さて、夕食を済ますと、いきなりすることがなくなるのがビバーク演習である(汗
 しかし、今回は晴れているので、寒いのさえ我慢すればツエルトの外に出て暇を潰すこともできる。
 試しにツエルトの外を覗くと、今夜はほぼ満月でひときわ明るい月の光が雪原に反射してとても綺麗だ。
 思い切って外に出てみようかとも考えたが、凍るように冷たくなっている登山靴の中に足を入れるのはやはり億劫である。
 元来無精者のらんぼ~流、ここでもものぐさぶりを発揮してツエルト内から雪の夜景を撮影してお茶を濁した(^^;
 午後9時45分、本格的に寝る態勢に移る。
 グラウンドシートを入れていたスタッフサックの中にレインウェアの上下を詰め込んで枕を作ると、マットについているストラップで固定する。
 前回同様、シュラフは用意していないが、上下服とも防寒を考慮したレイヤリングをしているのでシュラフカバーだけでもあまり寒さは感じない。
 しかし、ウールの靴下1枚の足先だけは冷たく冷え切っている。
 ビバークを始めてからずっと気にはなっていたのだが、いざ寝る段になると、それは無視できないほど強烈になっていることに気付いた。
 仕方がないので、腰から下のマット代わりに敷いていたザックの上蓋を開けて内部に足を突っ込んだ。
 充分な防寒具のないビバークではよく使う手として紹介されているが、ほんのわずか、寒さがやわらいだくらいで、顕著な保温効果は認められない。
 まあ、生死を分ける場面ではその『ほんのわずか』が重要なのだろうが・・・(^^;
 さて、足先は冷たいが、凍死するような状況ではない。
 とにかく眠る努力をすることにして、暇つぶしの手段として装備に加えたCOWONのポータブルAVプレーヤーで録音済みのWEBラジオを聞きつつ、目を閉じた。
 そのまま、およそ3時間が経過した。
 「・・・だめだ、眠れん」
 久しぶりの野営で興奮しているせいもあろうが、何より足先が冷たすぎて眠れない。
 「やばいな・・・このまま、朝まで眠れないのか・・・?」
 そう呟いた瞬間、ひときわ大きい風がツエルトを揺さぶり、ほぼ同時に顔に何やら冷たいものが落ちてきた。
 「んが、どこかに穴でも空いたのか!」
 慌ててライトで頭上を照らすと、ツエルトの内壁一面に氷が張っていた。
 呼気に含まれる水蒸気が結露し、それが凍って付着したものだろう。
 「何てこった・・・」
 ツエルト内の条件を考えれば、起こって当然の現象なのだが、実際に目にするまでは想像すらできなかった。
 氷の層は時間の経過とともに厚くなり、それに伴って、落ちてくる氷の量も多くなっていった。
 加えて、さらに難題が持ちあがった。
 いや、まあ、単純に小用を足したくなっただけなのだが、現在の状況を考えると、それは充分に難しい問題だった。
 「う~ん、しっこしたい・・・」
 ちなみに坊ガツルキャンプ場には立派なトイレが設置されている。
 トイレはらんぼ~流のテントサイトから数十メートルのわずかな距離にあるのだが、どうにもそこまで行くのが面倒くさい。
 冷たさを通り越してすでに痛みまで感じ始めている足先を氷のように冷え切った登山靴の中に入れるのは、考えただけでも嫌になる。
 「う~ん、う~ん、どうしよう・・・ここはマンガのように袋の中か・・・?」
 雪中泊ではビニール袋の中に小用を足すという話をよく聞くが、そうしたくなる気持ちが初めて理解できた(^^;
 むしろ、熱効率を考えれば、積極的にそうするべきなのだろう。
 しかし、演習においては、やはり端折りたい部分である(^^;
 「え~い、俺は行く!!!」
 一念発起し、凍った登山靴を履いてトイレへ。
 久しく味わったことのないレベルの解放感を得ると、このまま少し無理をしてでも、しばらく外で楽しんでやろうと前向きな気持ちになった。
 ツエルトからストーブとコッヘルを持ち出し、空っぽになっていたテルモスにお湯を補給するため、炊事棟で湯を沸かした。
 湯が沸くまでの間、夜景の撮影を楽しむ。
 何だかんだ言いながらも、やはりこういう時間は楽しいものだ。
 ツエルト内に戻った後、再び横になって眠る努力をした。
 午前6時30分をまわると、少しずつツエルトの中が明るくなってきた。
 長い夜がようやく終わったのだ。
 明け方、20分ほど意識のない時間があったが、結局ほとんど眠れなかった。
 「でも、まあ、何とか夜をやり過ごしたよな・・・」
 途中で逃げ出すこともなく、シュラフなしで朝まで耐え抜いたのだ。
 寝不足で少し気だるい身体を意識しながら、僕は前回のリベンジを果たした達成感を一人噛みしめていた ――
(文・山岡隊員 、写真及び写真説明・山岡隊員)
坊ガツルキャンプ場 今回は野営の同志が数名いた ひとまず、管理休憩舎を確認する
坊ガツルキャンプ場 (16:02)
日暮れまであまり時間はない。
今回は野営の同志が数名いた。
ま、向こうはきちんとしたテントだが・・・。
ひとまず、管理休憩舎を確認する。
さて、今回は・・・。
やはり、先客がいた(^^; テントサイトの跡を発見 ツエルトを設置
やはり、先客がいた(^^;
相手もソロっぽいので、同宿もありか。
テントサイトの跡を発見。
枯れ草を敷き詰めるとは、よい工夫だ。
ツエルトを設置 (16:41)
今回はポールを使って張ることができた。
今回は背面にマットを敷いた 荷物を整理していると、アークIIIの水パックが凍っていることに気付く ランタンの代わりにカメラの三脚にペツルのヘッドランプを装着した
背面に新装備のマットを敷く。
これで地面からの冷えは遮断できる(^^
荷物を整理していると、アークIIIの水パックが凍っていることに気付く(汗 ランタンの代わりにカメラの三脚にペツルのヘッドランプを装着した。・・・使えるw
アークIIIの非常用食料を齧る 気がつくと、2リッターのペットボトルの水も凍り始めていた ツエルト内はマイナス4℃
日没後、夕食タイム (17:55)
アークIIIの非常用食料を齧る。
気がつくと、2リッターのペットボトルの水も凍り始めていた。 ツエルト内はマイナス4℃。
水も凍るはずだ・・・(^^;
ツエルトの外を覗くと、雪原に月の光が差していて何とも綺麗だ スローシャッターで撮影開始である ツエルトから顔だけ出して撮影したにしてはうまく撮れている
ツエルトの外を覗くと、雪原に月の光が差していて何とも綺麗だ。 こいつを見逃す手はない。
スローシャッターで撮影開始である(^^
ツエルトから顔だけ出して撮影したにしてはうまく撮れているw
ちなみに外の温度はマイナス9℃ スタッフサックに雨具を入れて枕を作る シュラフカバーだけでは足先が冷えるので、さらにザックの中に突っ込んだ
ちなみに外の温度はマイナス9℃。
かなり冷え込んできた。 (20:48)
そろそろ寝る準備を整える (21:45)
スタッフサックに雨具を入れて枕を作る。
シュラフカバーだけでは足先が冷えるので、さらにザックの中に足を突っ込む。
気がつくと、ツエルトの内壁に氷が・・・。 風がツエルトを揺さぶるたびに、壁面の氷が雪のように落ちてきた 気を紛らわすために、ビデオを見たり音楽を聴いたりして過ごす
足先が冷たくて眠れない。気がつくと、ツエルトの内壁に氷が・・・。 (0:59) 風がツエルトを揺さぶるたびに、壁面の氷が雪のように落ちてきた(汗 気を紛らわすために、ビデオを見たり音楽を聴いたりして過ごす。
トイレに行ったついでにお湯を沸かす そのまましばらく夜の撮影を楽しむ ようやく東の空が白み始めた
トイレに行ったついでにお湯を沸かす。
温かい飲み物だけが唯一の救いだ。
そのまましばらく夜の撮影を楽しむ。寒くて眠れないが、やはり来てよかった(^^ ようやく東の空が白み始めた。
とりあえず、ビバーク成功か? (6:44)
-らんぼ~流イチ押しの厳選アイテム-
■ファイントラック(finetrack) ツエルトII■
2~3人用のツエルト。本来非常用のアイテムだが、透湿性を持つ素材を全面に使っているので居住性能が高く積極的にテント代わりに使っていきたいモデル。また、テンションのかかる部分にはダイニーマテープによる補強がされているので強度も十分。重量はわずかに340gと超軽量だ。

ご購入はこちらから >>>  

-らんぼ~流イチ押しの厳選アイテム-
■モンベル(montbell) U.L.コンフォートシステムパッド 90■
世界最小・最軽量のウレタンフォームマット。バルブを開放するとスポンジの膨張力で自動的に空気が入るというが、それは大嘘。さっさと諦めて自分の息で膨らませるべし。自動膨張はしないが、それ以外の点については非常に扱いやすくよくできたアイテム。大きなサイズもあるが、山屋ならコンパクトな90サイズを選ぶべき。

ご購入はこちらから >>>  

くじゅう連山の盟主、久住山の山頂。
■2日目
坊ガツル~北千里浜~久住山避難小屋~牧ノ戸

 午前7時30分 ――
 すでにあたりは明るくなっていたが、僕はツエルトの中で一人悶々としていた。
 眠れないながらも何とか無事に夜をクリアした今回のビバーク演習。
 あとは駐車場に戻るだけというものの、坊ガツルから牧ノ戸までは雪深い山中を3時間近く歩かなければならない。
 ほとんど徹夜に近い今の状態で果たして最後まで歩き通すことができるだろうか?
 「う~ん、どうするよ・・・」
 今はまだ氷点下だが、太陽の光を浴びて少しずつツエルト内の温度はあがっている。
 ここはツエルト内が快眠できる温度まで上昇することを期待して、体力の回復を図るべきか?
 それとも、少しでも体力が残っているうちに出立し、そのまま強行軍で下山すべきか?
 目を閉じて自分の身体が発する意見に耳を傾けてみたが、なかなか判断がつかなかった。
 普段と違う状況下に置かれていることで、幾分気が昂ぶっているのだろう。
 疲れていないはずはないのに、今ならまだ動けるような気がしていた。
 頭は少し重いが、眠気もあまり感じない。
 横になってすんなり眠れるのなら話は別だが、このまま待っても快眠域まで温度が上がる保証はない。
 眠ることができずに時間を浪費するのであれば、やはりここは無理を押してでも出発すべきだ。
 僕は迷った末に下山を決断すると、のろのろと撤収作業を開始した。
 寝不足で頭と身体の動きが緩慢になっているのだろう、荷物をまとめるのに相当の時間を要する。
 「やはり少しでも睡眠をとっておくべきだろうか・・・」
 何度か作業の手を止めて逡巡したが、その度に「いや、やはり」と気力を奮い起こす。
 撤収作業を開始してから1時間半、午前9時12分に撤収準備完了。
 車を止めてある牧ノ戸駐車場を目指して行軍を開始した。
 「あれ・・・?」
 歩き始めて5分も経たないうちに、僕は足の裏に違和感を感じた。
 そして、その違和感はすぐに痛みに変わった。
 使い慣れていないアイゼンのせいで普段と違う場所に負荷がかかっているのだろう。
 足に馴染んでいるはずのザンバランを履いているにも関わらず、足裏に肉刺ができかけているようであった。
 「やばいな・・・」
 早めに保護テープを貼ってやるべきなのだろうが、治療をする気力がわいてこない。
 雪の中に腰を下ろし、ザックの奥から治療具を出し、スパッツとアイゼンを外し、登山靴を脱ぎ、靴下を下ろして・・・という手順を思うだけで嫌になる。
 それよりはこれ以上痛みが悪化しないように不安箇所をかばいながら、あと3時間騙し騙し歩き続けるほうがまだましに思えた。
 苦痛を無視して行動するのは、らんぼ~流の本懐だ。
 大したことはない。もっと、きついことは過去にもあったじゃないか。
 僕は心の中でそう繰り返しながら、法華院温泉山荘を素通りし、北千里浜に通じる急坂に取り付いた。
 北千里浜に出ると、先ほどまで見えていた青空が一転して白いガスに覆われていた。
 昨日と違い、風もかなり強く吹いている。
 思わず僕は立ちすくんだ。
 「うが・・・何だよ、これは」
 頭の片隅には常に昨夜ほとんど眠っていないことに対する不安があった。
 天候の悪化がその不安に輪をかける。
 「くそ、どうするよ・・・」
 ここで立ち止まっていても仕方がない。
 とにかく進まないことには帰れないのだ。
 僕は再び足を動かし始めると、エスケープルートの算定に入った。
 往路を使って牧ノ戸まで戻るには、一度久住分れまで登る必要がある。
 今いる場所との高低差はおよそ150メートル。
 前回歩いたコースタイムを参考に考えれば、登りだけで1時間近く要する。
 それからさらに沓掛山を越えて、最終的に牧ノ戸に出るまではプラス1時間30分というところだろう。
 しかし ――
 この先のすがもり越から硫黄山道路を使って長者原まで戻るというプランはどうだろう。
 そうすれば体力を消耗しやすい上り坂はすがもり越の手前に少しあるだけで、あとはひたすら緩やかな下り坂となる。
 もちろん下山口は違うが、下界に下りることさえできれば、あとはどうにでもなるだろう。
 長者原からタクシーを使って牧ノ戸に戻ってもよい。
 さらに、もっと早く下界に出るには、硫黄山道路から大曲り方面に下るという手もある。
 歩きながらいろいろと考えたが、結局、最終的に僕が選んだのはこのまま往路を使って牧ノ戸までと戻るいう方法だった。
 まだ歩けるという甘い判断もあったが、やはり最後まで自分の足で歩いて帰りたいという気持ちが強かったのだ。
 とにかく、久住分れまで出れば何とかなる。
 すぐそばには久住山避難小屋もあるし、そこから牧ノ戸まではくじゅうで最もメジャーなルートだ。
 この天候でも歩いている登山者はたくさんいるだろう。
 もし、本当に動けなくなれば、彼らに助けを求めることもできる。
 10時19分、すがもり越へ至る分岐点を通過。
 エスケープルートをとることなく、濃いガスの中、久住分れを目指す。
 北千里浜の南端から久住分れへ伸びるルートは結構な急坂である。
 僕は足裏の痛みと疲労から何度も立ち止まり、荒い息を吐いた。
 「くそ、もうちょいのはずだ・・・」
 上を見上げたところでガスで視界を遮られているので、どこまで坂が続いているのか見当がつかない。
 萎えそうになる気持ちを何度も奮い立たせながら少しずつ高度を上げていくと、やがて谷を駆け下りる風が人の話し声を運んできた。
 「助かった・・・」
 11時11分、久住分れに到着。
 かなり消耗していたので、行動記録写真もおざなりに、すぐそばの久住山避難小屋に逃げ込んだ。
 小屋の中は複数のパーティーを含む登山者で溢れていた。
 奥の部屋と前室を合わせると20人近くいるだろう。
 僕は奥の部屋のベンチに腰を下ろすと、目を閉じて体力の回復を待った。
 しかし、腰を下ろしてから数分経過しても荒い息が治まらない。
 そのうちに上半身が痺れてきて、胸を締め付けられるような感覚を覚えた。
 まるで身に着けているアンダーシャツが微弱な電流を発しながら少しずつ縮んでいるような、そんな感じだった。
 『うが・・・何だ、この感覚は・・・。まじにやばくなってきたのかな・・・』
 思わずレインウエアの胸をはだけてみると、その下の中間着からアンダーまでもがびしょびしょに濡れていた。
 発汗を抑えるために意識してゆったりしたペースで行動していたはずなのに、先ほどの急登で思わぬ量の大汗をかいていたのだろうか。
 いや、もしかしたら、これは体調不良から来る冷や汗かも知れない。
 『くそ、こうなったら、ここで大休止するほかなさそうだな・・・』
 正直動くのも億劫だったが、レインウエアを脱ぐと、ザックの中からダウンジャケットを出して着込んだ。
 痺れるような感覚は少しずつ薄れてきたが、どうにも荒い息が治まらない。
 そのときになって、周りにいた登山者の一人が気分でも悪いのかと僕に声を掛けてきた。
 「いいえ、少し疲れただけです・・・」
 ビバークの練習をしていてほとんど眠っていないのです ――
 正直に事情を説明するのは恥ずかしかったので最初は固辞したものの、僕の様子があまりにひどかったのだろう、隣に座っていた年長の登山者に「こんなときは遠慮などしないものだ」と諭された。
 その後は小屋の中にいたたくさんの人たちがいろいろと面倒をみてくださった。
 温かいコーヒーを淹れてくれたり、背中にカイロを貼ってくれたり、水筒にお湯を入れて湯たんぽを作ってくれたり、手かざし治療をしてくれたり・・・。
 それはもう、こちらが気恥ずかしくなるほどのお世話をしていただいた。
 僕は彼らの厚意を受けながら、「ああ、俺はやっぱり遭難していたのだな」と思った。
 確かにツエルトだけで一晩過ごした。
 しかし、結局眠れずに体力の回復どころか温存さえできなかった。
 これを遭難と言わずして何と言おう。
 1時間後、身体の痺れも収まり、何とか歩く気力を取り戻した僕は彼らに礼を言うと、久住山避難小屋を後にした。
 牧ノ戸まであと1時間半。
 まだ身体は重いが、これから先は今まで何度も歩いたことのある道だ。
 空も少しずつ明るくなっているし、何とか最後まで歩けるだろう。
 13時11分、沓掛山山頂を通過。
 あとは登山口まで整備された遊歩道を下るだけだ。
 13時32分、牧ノ戸登山口に到着。
 今回は特別反省すべき点の多いビバーク演習となった。
(文・山岡隊員 、写真及び写真説明・山岡隊員)
眠気を振り払うため、洗顔を決意するも、即座に挫折 結構な風に一晩耐え抜いたツエルト 撤収作業開始
眠気を振り払うため、洗顔を決意。
そして、即座に挫折w
結構な風に一晩耐え抜いたツエルト。
帰ったら、早速メンテしてやろう。
撤収作業開始 (7:48)
写真は最後にツエルトをたたむ様子。
ようやく撤収作業完了 法華院温泉山荘を通過 北千里浜に到着
ようやく撤収作業完了 (9:12)
時間かかりすぎだ・・・。
法華院温泉山荘を通過 (9:28)
天気もよいし、何とか帰りつけるだろう。
北千里浜に到着 (10:08)
行く手には一転して濃いガスが・・・。
すがもり越を通過 久住分れ 久住山避難小屋
すがもり越を通過 (10:19)
このまま往路を戻ることを選択。
久住分れ (11:11)
この時点で体力をかなり消耗していた。
久住山避難小屋 (11:14)
とりあえず、休息して体力の回復を・・・。
小屋に着いてから、急に体調が悪化 何とか歩けるくらいに回復 少しの登りでも身体が重く感じる
小屋に着いてから、急に体調が悪化。
写真はお世話をしてくれた方々。
何とか歩けるくらいに回復 (12:10)
次に歩けなくなったら本当にやばい。
少しの登りでも身体が重く感じる。
写真は沓掛山。これさえ越えれば・・・。
沓掛山山頂に到着 沓掛山山頂から見た三俣山の雄姿 同じく山頂から見た涌蓋山と女岳
沓掛山山頂に到着 (13:11)
気がつくと、ガスが綺麗に晴れていた。
沓掛山山頂から見た三俣山の雄姿。
また来いよ、と言われた気がした。
同じく山頂から見た涌蓋山と女岳。
向こうも久しぶりに登ってみたい。
沓掛山の東屋 牧ノ戸登山口に下山 駐車場に到着
沓掛山の東屋。
昨日の屋根の雪はすっかり解けていた。
牧ノ戸登山口に下山 (13:32)
何とか歩いて戻ることができた。
駐車場に到着 (13:35)
今回もいろいろと反省すべき点の多いビバーク演習となった。
-らんぼ~流イチ押しの厳選アイテム-
■deuter(ドイター) フューチュラ32■
ザック背面の通気性にこだわりを持つことで知られるドイツのアウトドアメーカー、ドイターの代表的モデル。一般的な日帰り登山に必要十分な容量を持つ2気室の使いやすいデイパックである。レインカバーが内蔵されている点もポイントが高い。

ご購入はこちらから >>>  

-らんぼ~流イチ押しの厳選アイテム-
■イスカ(ISUKA) ウルトラライト スタッフバッグ 3L■
シリコンコーデュラを使用した超軽量・超コンパクトなスタッフバッグ。非常に薄く作られた素材だが引き裂き強度に優れ、撥水性も併せ持つ。また、生地の滑りがよいため、内容物を詰め込みやすい点もポイントだ。サイズは本品の他に、5L・10L・20Lのラインナップがある。

ご購入はこちらから >>>  

▲ ページトップへ戻る     
第3回ビバーク演習 (長者原~坊ガツル~長者原 2010.1.22-24)

 元旦から2日にかけて行った2度目の冬季ビバーク演習は、らんぼ~流の状況認識と判断の甘さから「あわや、遭難か」という不本意な結末となった。
 氷点下の坊ガツルで一晩過ごすことには成功したが、結局眠ることができずに翌日の行動に支障をきたしたのだ。
 ―― 行動に危険の伴う夜間や悪天候のフィールドにおける緊急避難のテクニック。
 僕は今までビバークをそういう意味でしかとらえていなかった。
 しかし、前回の演習を通じて、僕は大きな勘違いをしていたことに気付いた。
 ビバークとは、すなわち「寝ること」なのだ。
 夜間や悪天候のフィールドで安全な場所を確保して危険を回避すると同時に、翌日以降の行動に必要となってくる体力を温存、回復することなのだ。
 したがって、今回の演習では快眠のために考えられる装備をすべて携行することにした。
 そして、演習を繰り返す中で、過剰と思われる装備を見極め、絞り込んでいく。
 無論、それらの装備を持って行くとなると、普段使いの32リッターのドイターには収納しきれない。
 よって、今回からしばらくの間、らんぼ~流の持つザックの中で最大容量を誇る80リッターのカリマーを戦線に投入する。

■今回の装備  >>>開く
長者原から坊ガツルに向かう途中、美しい雪の造形を見つけた。
■前夜 - 1日目[その1]
長者原(車中泊)~坊ガツル

 1月22日金曜日。
 僕は職場を22時に退社すると急いで自宅に戻り、用意していた装備を車に積み込んで久住へと出発した。
 今回のビバーク予定地は前回に引き続いて坊ガツルキャンプ場である。
 前回までのように最小限の装備で挑む演習とは違って、今回は始めから山中で宿泊することを想定した贅沢な装備を携行している。
 よって、目的地を近場に法華院温泉山荘のような逃げ場所がある坊ガツルに設定する必要はないのだが、前回前々回と2回連続して不本意な敗退をしているので、ここはどうでもリベンジをしておかねば気がすまなかったりするのだ(^^;
 日付が変わって、23日の0時43分。
 長者原に到着した僕は手早く車中泊の準備をした。
 助手席の足元にバスマットを置き、シートを倒して、化繊綿のシュラフを敷く。
 結露の激しい車内では湿気に弱いダウンのシュラフはなるべく使わないほうが懸命だ。
 ランタンの灯りの中、寝酒を飲みつつ、1時45分に就寝。
 
 同日、7時35分に目覚めた僕はのろのろと身支度を整えて入山のための準備に入った。
 外は氷の粒のような細かい雪が舞っていて、相当に寒い。
 8時38分、行軍開始。
 いつも観光客でにぎわっているタデ原湿原も今朝はまだ誰もいない。
 9時52分、雨ガ池を通過。
 10時を過ぎると、少しずつ気温が上がってきた。
 登山道を覆う凍土が少しゆるんできたのだろうか、たまに足を置いた場所が滑るようになった。
 アイゼンをつけようかとも考えたが、滑落の危険があるようなコースではないので、そのまま歩き続ける。
 10時43分、坊ガツルキャンプ場へ到着。
 これより、第3回冬季ビバーク演習に移る。
(文・山岡隊員 、写真及び写真説明・山岡隊員)
牧ノ戸峠を通過 長者原に到着 ランタンの光の中、助手席のシートを倒して車中泊の準備をする
牧ノ戸峠を通過 (0:31)
細かい雪がちらついている。
長者原に到着 (0:43)
駐車場にはキャンピングカーが2台。
ランタンの光の中、助手席のシートを倒して車中泊の準備をする。
シュラフに入って、寝酒を飲む 起床 出撃準備完了
シュラフに入って、寝酒を飲む。
就寝時刻は午前1時45分。
起床 (7:35)
登山口の方に車を移動させる。
出撃準備完了。
細かい雪が結構降っている。
行軍開始 タデ原湿原入口 自然研究路を外れ、雨ガ池方面へ
行軍開始 (8:38)
予報では天候は回復するはずだが・・・。
タデ原湿原入口。
この時間、さすがに観光客はいない。
自然研究路を外れ、雨ガ池方面へ。
ここから先は登山者の世界だ。
粉雪の舞い散る登山道 崩壊地を通過 雨ガ池
粉雪の舞い散る登山道。
朽木が白い砂糖菓子のようだ。
崩壊地を通過 (9:26)
このへんから少しずつ空が明るくなった。
雨ガ池 (9:52)
木道はかえって滑るので、地面を歩く。
不思議な造形を見せる雪のオブジェ こちらは盛り上がった足跡 坊ガツルが見えてきた
不思議な造形を見せる雪のオブジェ。
どのようにしてできたのだろう?
こちらは盛り上がった足跡。
これもどのようにしてできたのか不明。
坊ガツルが見えてきた。
キャンプ場へは午前10時43分に到着。
-らんぼ~流イチ押しの厳選アイテム-
■OSPREY(オスプレー) アルゴン85■
一週間までの縦走やバックパッキングに対応する頼もしいモデル。背面システムのリカーブサスペンションには7075-T6アルミニウムを採用し、大型パックに最適の剛性感とフレキシビリティーを実現している。内側にウェストベルトを備えたトップポケットは、取り外してヒップパックとして使用可能。
ご購入はこちらから >>>  

-らんぼ~流イチ押しの厳選アイテム-
■OSPREY(オスプレー) ULレインカバー L■
60L以上のバックパックに対応するレインカバー。ブランドにこだわりのない人は他のメーカーからも出ているので選択の幅は広い。らんぼ~流は好みではないが、明るく目立つ色だと遭難時に助かる可能性があがるかも。パックを汚したくない人は普段からつけておくのも可。
ご購入はこちらから >>>  

「最強のソロテント」の異名を持つヒルバーグのアクト。
■1日目 [その2]
ビバーク演習?
いいえ、ただのキャンプです(^^;

 「な、何が起きたんだ、これは・・・」
 坊ガツルに到着した僕はいきなり言葉を失った。
 美しく冬枯れした野原にブルーシートやら黒いゴム板といった無粋な代物が一本の道のように這っているのだ。
 何事かと辿ってみると、管理休憩舎の前に工事車両の姿を確認した。
 どうやら管理休憩舎を建て替えるらしい。
 想定外のイベントだが、ここは行動記録本記に記録しておく必要があろう。
 というわけで、テントの設営は後回しにして、工事現場の写真を撮影することにした。
 建物の外観と新しく建設中の基礎部分をカメラに収めた後、管理休憩舎の内部に入る。
 焚き火の跡が残る大部屋の天井には、工事のための措置だろう、電線が引かれ真新しい蛍光灯が取り付けられている。
 さらに奥の部屋を覗くと、何と石油ストーブが置かれていた。
 「うーむ、前回、こいつがあったら ――
 ・・・絶対、逃げ込んでいただろうw
 さて、一通り写真を撮り終えた後はビバーク演習の再開だ。
 僕は前回から目をつけていた場所に移動すると、早速テントの設営を開始した。
 今回使用するのはヒルバーグ社製のアクトという一人用のテントだ。
 自立式のテントではないので必ずペグダウンが必要だが、丈夫で軽く、かつ充分なスペースの前室が確保されている。
 透湿性と保温性に優れるダブルウォールタイプであるにも関わらず、フライシートとインナーテントが一体化されているので設営時間が短く済むのも特徴のひとつだ。
 また、今回、ペグは付属のものではなく、クロームモリブデン鋼のペグを使用した。
 軽量かつ強靭なクロモリ鋼はアウトドア用途ではハーケンなどに使用されている素材である。
 一般のペグでは歯が立たないようなガチガチの凍土でも簡単に刺さる。
 ちなみにキャンパーの間で持て囃されているスノピのソリッドステークは頑強で扱いやすい優れたペグだが、登山用として携行するには重量がありすぎる。
 テントを設営し、荷物の整理を終えると、ちょうど昼時になった。
 今回はザックの容量に余裕があったので、調理用具も少しかさばるものを持ってきている。
 昼食は乾燥野菜とウィンナーをたっぷりと入れた焼きそばだ。
 たかが焼きそばと言えど、普段、らんぼ~流携帯食料で済ませている味気ない食事から考えると想像もつかないような手の込んだ料理である(汗
 あまりにもうまいので、調子に乗って、夜の楽しみに取っておいたバーボンを半分ほど消費(^^;
 目の前には真っ白な大船山が魅力的な姿で横たわっているが、ほろ酔いで雪山に挑むのはやめておくことにして、持ってきていたハードカバーを広げるらんぼ~流であった。
(文・山岡隊員 、写真及び写真説明・山岡隊員)
坊ガツルキャンプ場に到着 管理休憩舎の前に工事車両を確認 小屋のそばに工事の看板を発見
坊ガツルキャンプ場に到着 (10:43)
何か様子がおかしい・・・。
管理休憩舎の前に工事車両を確認。
いったい何事だろう?
小屋のそばに工事の看板を発見。
どうやら管理休憩舎を建て替えるらしい。
これが見納めかも知れないので、ひたすら資料写真を撮りまくる 管理休憩舎の内部 さらに奥の部屋を拝見
これが見納めになるかも知れないので、一通り資料写真を撮っておく。 管理休憩舎の内部。
焚き火の跡が歴史を物語る。
さらに奥の部屋を拝見。
何と石油ストーブが置かれていた。
新しく建設中の避難小屋 工事現場に置かれていた温度計 今回のテントサイト
新しく建設中の避難小屋。
内部は現在のものより狭そうだ。
工事現場に置かれていた温度計。
目盛りはマイナス3℃を示していた。
今回のテントサイト。
すでに枯れ草が敷かれている。
第3回ビバーク演習を開始 クロームモリブデン鋼のペグ テント設営完了
第3回ビバーク演習を開始 (11:03)
使用するテントはヒルバーグのアクト。
クロームモリブデン鋼のペグ。
ガチガチの凍土でも簡単に刺さる(^^
テント設営完了 (11:16)
黄色く見えるのはインナーテント。
荷物を広げ、テント内を整頓 テントの中から見た大船山 その前に昼メシを食うことに
荷物を広げ、テント内を整頓。
広い前室を持つアクトは居住性が高い。
テントの中から見た大船山。
さて、あそこまで行ってみるか・・・。
その前に昼メシを食うことに (12:18)
今回はちょっとメニューに凝ってみる。
乾燥野菜を水で戻している間に、ソーセージを適当な大きさに切る 油の代わりにサラミソーセージを少量熱して、フライパンを火に馴染ませる 熱したフライパンに、野菜、ソーセージ、生麺を入れて一気に炒めていく
乾燥野菜を水で戻している間に、ソーセージを適当な大きさに切る。 油の代わりにサラミソーセージを少量熱して、フライパンを火に馴染ませる。 熱したフライパンに、野菜、ソーセージ、生麺を入れて一気に炒めていく。
さらに液体ソースを投入 らんぼ~流の適当料理にしては思いのほか旨いので、昼間から飲酒 すでに山に登る気はない・・・(^^;
さらに液体ソースを投入。
味が馴染むまでかき混ぜて完成だ。
らんぼ~流の適当料理にしては思いのほかうまいので、昼間から飲酒w さらに持ってきたハードカバーを広げる。
すでに山に登る気はない・・・(^^;
-らんぼ~流イチ押しの厳選アイテム-
■HILLEBERG(ヒルバーグ) アクト■
「最強のソロテント」の異名を持つスウェーデン製の天幕。4シーズンに対応するダブルウォールタイプでありながら、重量わずか1.24㎏と軽量で、なおかつ、居住スペース・前室ともに十分な広さを確保されている。また、素材は紫外線による劣化が少なく、引き裂き強度12kgを誇るKerlon1200が使われ、耐久性能もずば抜けている。

ご購入はこちらから >>>  

-らんぼ~流イチ押しの厳選アイテム-
■サウスフィールド SF1200TD (ドームテント1~2人用)■
コストパフォーマンスに優れる1~2人用ダブルウォールテント。5000円前後という販売価格ながら、しっかりと作りこまれており、左右に前室も用意されている本格派。フロア部の耐水圧が1200mmしかないので、悪天候のときは少し心許ないが、通常のキャンプなら必要十分な性能だ。

ご購入はこちらから >>>  

-らんぼ~流イチ押しの厳選アイテム-
■Chinook(チヌーク) キャニオン ハードアノダイズド フライパン■
軽量のアルミ製フライパン。取っ手が折り畳めるのでパッキングしやすい。内面はノンスティック加工されており、内容物が焦げ付きにくくなっている。フライパンとしての使い勝手もさることながら、深さが結構あるので袋ラーメンを作るのにベストなクッカーだ。サイズは7.75インチと8.5インチの2種類がある。
ご購入はこちらから >>>  

陽が落ちた後のフィールドでは暖色LEDランタンの灯りが心地よい。
■1日目[その3]
そうです、ただのキャンプです(夜)

 気がつくと、すでにあたりは薄暗くなっていた。
 シュラフにくるまって、ハードカバーを読んでいるうちにいつの間にか眠っていたらしい。
 僕はあらかじめテントの前室の上に取り付けておいたLEDランタンの電源を入れた。
 時刻は18時26分。
 すでに空には満天の星空が広がっている。
 「あう・・・寝過ごしたか・・・」
 夕暮れ時の美しい山並みを見逃し、僕は少し残念な気分になった。
 しかし、これも今回用意した装備が氷点下のフィールドに通用するということの証明であろう。
 僕はそう気を取り直すと、夕食の準備をすることにした。
 乾燥野菜を水で戻し、細切れにしたウィンナーと混ぜて、野菜炒めを作る。
 バーボンのお湯割りを飲みながら、完成しつつある野菜炒めをつまみ食いしていると、胃が刺激されたのか、ひどく腹が減っていることに気付いた。
 「うーん、やっぱ麺でも入れるか・・・」
 結局、フライパンの中は昼間と同じ焼きそばになっていく。
 「しかし、これではあまりにも芸がないな」
 らんぼ~流は基本的に食事に対してこだわりがない。
 普段から特に何が食いたいとは思わないし、同じメニューが数日続いても全然気にならないヒトである。
 だから、同じメニューが2回続くのは、らんぼ~流的には全然OKなのだが、サイト記事のためにはすこぶるよろしくないw
 「ここはチーズを絡めてみよう・・・」
 僕は全く躊躇することなく、アーモンド入りのベビーチーズを2切れ、フライパンの中に投入した。
 トロリと溶けたチーズが芳しい糸を引きながら、麺やウインナーと絡んでいく。
 そんな光景がらんぼ~流の頭の中に広がっていた。
 このへん、らんぼ~流アウトドアクッキングのレパートリーの広さが窺えるというものだ(^^b
 しかし、実際は ――
 「何故だ? 何故、全然、溶けないんだ・・・?」
 表面が微妙にやわらかくなっただけの四角いチーズを齧りながら、僕は憮然とした表情でバーボンを啜っていた ――
 ・・・閑話休題(汗
 さて、少し悲しい夕食を済ませた後、僕は本格的に寝る準備に入った。
 まだ就寝時間には早すぎるが、昼間のようにいつの間にか寝入ってしまっては風邪を引くかも知れない。
 今回使用するシュラフはナンガのポーリッシュバック280DXというモデルだ。
 快眠温度域が6℃以上のスリーシーズン用のダウンシュラフだが、足先が冷えるのだけがネックだった前回の経験から、シュラフカバーをつけて防寒服を着込めば、シュラフ自体にはさほど防寒能力は必要ないだろうという判断からの選択だ。
 そして、前回、最も大きな障害となった足先の冷え対策には、内底に使い捨てカイロを貼りつけたモンベルのフットウォーマーを用意した。
 「よし、これで完璧なはずだ(^^」
 僕は前室のファスナーを閉めると、シュラフにくるまって、眠くなるまで読書を楽しむことにした。
 22時を過ぎると、ある程度外気を遮断している前室の中もマイナス4℃を下回るようになってきた。
 フライシートの内側には前回と同じように薄く氷の膜が張り付き始めた。
 「そろそろ、限界だな・・・」
 外気を遮断しているといっても、前室は完全に密閉されているわけではない。
 ちょうどよい時刻になってきたので、僕は読んでいたハードカバーを閉じると、インナーテントのファスナーを閉めた。
 朝まで持つかどうかはわからないが、前室に吊り下げたメインランタンは点けたままにしておく。
 「おお、これなら充分いけるな・・・」
 シュラフにもぐり、コードを絞って身体との隙間をなくすと想像以上に暖かい。
 最大の懸案事項だった足先の冷えについても、厚手の靴下を履いてカイロの熱を遮断しないと、低温火傷を起こすのではないかと不安になるくらい暖かかった。
 22時49分、就寝。
 昼間、妙な寝方をしたから眠れるかなと思ったが、目を閉じるとすぐに意識がなくなった。
(文・山岡隊員 、写真及び写真説明・山岡隊員)
昼寝から目覚めると、すでにあたりは暗くなっていた オリオンがとても綺麗だったので、試しに撮影 ソーセージと野菜で酒肴を作る
昼寝から目覚めると、すでにあたりは暗くなっていた (18:26) オリオンがとても綺麗だったので、試しに撮影。シャッタースピードは15秒。 夜は酒盛りと相場が決まっている。
早速、ソーセージと野菜で酒肴を作る。
腹が減ったので、結局焼きそばに変更 昼と同じメニューでは記事にならないので、チーズを入れて変化をつけた 夕食後、本格的に寝る準備を整える
腹が減ったので、結局焼きそばに変更。
驚愕の箸捌きを見せるらんぼ~流。
昼と同じメニューでは記事にならないので、チーズを入れて変化をつけた(汗 夕食後、本格的に寝る準備を整える。
今回はシュラフを持ってきている(^^
さらに前回の反省を活かして、フットウォーマーを装備する サブランタンの点灯試験 シュラフにくるまって、眠くなるまで読書を楽しむ
さらに前回の反省を活かして、フットウォーマーを装備する。 サブランタンの点灯試験。単2電池ほどの大きさだが、光量は充分だ。 シュラフにくるまって、眠くなるまで読書を楽しむ。
22時を過ぎ、さすがに冷え込んできた フライシートの内側には、前回同様、呼気に含まれる水分が凍り付いていた インナーの入口を閉めて就寝
22時を過ぎ、さすがに冷え込んできた。
前室の中はマイナス4.3℃。
フライシートの内側には、前回同様、呼気に含まれる水分が凍り付いていた。 インナーの入口を閉めて就寝 (22:49)
前室のメインランタンはつけておく。
-らんぼ~流イチ押しの厳選アイテム-
■GENTOS(ジェントス) エクスプローラー EX-757MS■
エネループに完全対応したLEDランタン。暖色LEDを使用しているので目に優しく雰囲気もよい。また、光量も十分で、夜間、テントの中で読書をして過ごすには大変重宝する。反面、単3電池4本必要なこととそれなりに電池の消耗が激しいので、長期の山行に持って行くのにはあまり向いていない。
ご購入はこちらから >>>  

-らんぼ~流イチ押しの厳選アイテム-
■ZIPPO(ジッポー) LEDミニランタン型 キーチェーン ML-01BK■
リチウムコイン電池で駆動する超小型ランタン。読書を快適に楽しめるほどではないが、テント内の照明として必要十分な明るさを持つ。電池の持ちも非常によく、予備の電池も携行しやすいので数週間に及ぶ長期の山行にも対応できる。残念ながら廃番になったGENTOSのLEDミニランタン LT-01CRと同等の製品。
ご購入はこちらから >>>  

時間に余裕があるので、ツエルトを張る練習をして遊んだ。
■2日目[その1]
ただのキャンプです(翌朝)

 6時32分、起床。
 あたりはまだ薄暗い。
 点けっぱなしだったはずの前室のLEDランタンは電池が切れたのか、灯りが消えている。
 今回、メインランタンとして使用したGENTOSのEX-757MSは単3電池4個で20時間近く連続点灯が可能なはずだが、気温が低いせいか一晩も持たなかった。
 使い勝手もよいし、明るくてムラのない散光は読書をするにはうってつけだが、いかんせん、電池の消耗が激しすぎる。
 1泊程度の山行なら問題ないが、それ以上の行程を要する山旅では携行するのを見合わせたほうがよいだろう。
 「う~む、さすがに少し寒いな」
 プロトレックのセンサーが示す前室の温度はマイナス6.3℃。
 相当に冷え込んでいるが、小用を足しに気合いを入れてトイレへ立ち、そのまま、朝の風景を撮影した。
 8時30分、朝食の準備に取り掛かる。
 メニューは山屋の朝食の定番、ラーメン餅である。
 簡単に説明すると、インスタントラーメンの中に餅を入れたものだ。
 エネルギーを大量に消費する登山時の朝食はできるだけたくさんの炭水化物を摂取する必要がある。
 ラーメンの中にさらに炭水化物の塊を入れるという、いかにも大雑把な料理だが、山ではとても理にかなった献立なのだ。
 今回は前日に使い切れなかった乾燥野菜とウインナー1袋をすべてぶち込み、大変贅沢な一品に仕上げてみた。
 寒いせいもあるだろうが、これがとても美味だった。
 こいつはしばらくマイブームになりそうである(^^;
 朝食後、撤収準備を開始する。
 撤収準備と言っても、まだ相当に時間の余裕があるので、これ以降使わない荷物をまとめておくだけだ。
 この日はとても天気がよく、午前9時を過ぎると気温も相当に上がってきた。
 やわらかな日差しに加えて、空気も乾燥しているので、シュラフなどの寝具をこの場でメンテして帰ることにする。
 それでも時間が余るので、今回使わなかったツエルトをタープ風に張る練習をして遊んだ。
 ファイントラックのツエルトIIには強いテンションをかけて設営することができるように、極薄の生地の4辺に強靭なダイニーマテープが仕込まれている(注1)。
 逆を言うと、そのテープに補強されていない部分に強いテンションを掛けると破損するかも知れないので、補強されている部分のループにあわせて張り綱を掛けなくてはならない。
 後掲の写真を見てもらうとわかるが、そのように張るとちょいと不恰好な形になってしまう。
 メーカーさんには次回の改良時に補強テープの長さを生地の4隅まで伸ばして欲しいと希望する。
 あとベンチレータのガイドの長さももう少し余裕を持たせて欲しい。
 そうこうしているうちに正午近くなったので、本格的に撤収準備を開始。
 13時3分、撤収準備完了。
 穏やかな天候と優秀な装備のおかげもあり、今回はとても快適なビバーク演習となった。
  • 注1)ダイニーマ:超高分子量ポリエチレンを原料にして作られた繊維で、有機繊維としては現在最高レベルの強度・弾性率を有する。軽量で対光性、対薬品性、対磨耗性能にも優れ、理論値では直径わずか10㎜のダイニーマのロープで約20tものウェイトを吊り下げることができるという。
(文・山岡隊員 、写真及び写真説明・山岡隊員)
起床 前室はマイナス6.3℃まで下がっていた 前室の入口を開けて外を見る
起床 (6:32)
写真はまだ薄暗い前室の内部。
ランタンの電池を交換し、温度を確認。
前室はマイナス6.3℃まで下がっていた。
前室の入口を開けて外を見る。
やうやう白くなりゆく山ぎは・・・(^^
早朝の薄明の中の三俣山とアクト カメラをパンして、中岳とアクト この日は他に2組のパーティーが野営
早朝の薄明の中の三俣山とアクト。
今日は朝からよい天気だ。
カメラをパンして、中岳とアクト。
このままカメラを持って散歩と洒落込む。
この日は他に2組のパーティーが野営。
写真は珍しいティピー型のテント。
さすがに冷えてきたので、朝の散歩を終えてテントの中に逃げ込む 朝食を作り始める チヌークのフライパンは胴が深いので、袋ラーメンを作るのにも適している
さすがに冷えてきたので、朝の散歩を終えてテントの中に逃げ込む (8:26) 朝食を作り始める (8:30)
献立は山屋の朝食の定番、ラーメン餅。
チヌークのフライパンは胴が深いので、袋ラーメンを作るのにも適している。
残った乾燥野菜をすべて投入 もうすぐ完成だ ラーメン餅を食するらんぼ~流
残った乾燥野菜をすべて投入。
とても贅沢なラーメン餅である(^^
餅も程よく柔らかくなってきた。
もうすぐ完成だ。
ラーメン餅を食するらんぼ~流。
はっきりいって、めちゃめちゃうまいw
朝食後、撤収準備 マットも小さくたたんでおく シュラフとカバーを干して風を通す
朝食後、撤収準備 (9:19)
もう使わない装備を少しずつまとめる。
マットも小さくたたんでおく。
モンベルのマットはとても扱いやすい。
シュラフとカバーを干して風を通す。
これだけ天気がよいと撤収も楽だ。
まだ時間に余裕があるので、ツエルトを張る練習をして遊ぶことに ツエルトをポールに固定する結び方も、もはや完全に習得した 張り綱のテンションを調整する様子
まだ時間に余裕があるので、ツエルトを張る練習をして遊ぶことに (9:58) ツエルトをポールに固定する結び方も、もはや完全に習得した(^^v 今回はタープ風に設営してみる。写真は張り綱のテンションを調整する様子。
少し不恰好だが、設営完了 ベンチレータのガイドのせいで、これ以上鈍角に張ることができない ツエルトの下にシートを敷いて、その上にすべての装備を集める
少し不恰好だが、設営完了 (10:32)
張り綱は補強テープの位置にあわせた。
ベンチレータのガイドのせいで、これ以上鈍角に張ることができない。 ツエルトの下にシートを敷いて、その上にすべての装備を集める。
吊り下げ方式になっているアクトのインナーテントを外して乾燥させる 本格的に撤収開始 撤収準備完了
吊り下げ方式になっているアクトのインナーテントを外して乾燥させる。 本格的に撤収開始 (11:53)
写真は干しあげたテントをたたむ様子。
撤収準備完了 (13:03)
今回はとても快適な演習だった(^^
-らんぼ~流イチ押しの厳選アイテム-
■ナンガ(NANGA) ポーリッシュバック250DX レギュラー■
良質なシュラフを作ることで知られている純国産メーカーの3シーズン用ダウンシュラフ。重量570g、収納サイズ15X25cmと携行しやすく、快眠温度域も-1~-6℃と汎用性が高い。修理費無料の永久保証制度があるのもありがたい。

ご購入はこちらから >>>  

-らんぼ~流イチ押しの厳選アイテム-
■モンベル(montbell) U.L.コンフォートシステムパッド 90■
世界最小・最軽量のウレタンフォームマット。バルブを開放するとスポンジの膨張力で自動的に空気が入るというが、それは大嘘。さっさと諦めて自分の息で膨らませるべし。自動膨張はしないが、それ以外の点については非常に扱いやすくよくできたアイテム。大きなサイズもあるが、山屋ならコンパクトな90サイズを選ぶべき。

ご購入はこちらから >>>  

icon -らんぼ~流イチ押しの厳選アイテム-
■CRAZY CREEK(クレイジークリーク) ヘクサライトオリジナルチェア■
クレージークリークといえば、丸めて携帯できるこの座椅子。特にこのヘクサライトシリーズはより軽量コンパクトに携帯できるように素材から開発されたモデルである。本来の用途の他にスリーピングマットとしても利用でき、らんぼ~流はよくモンベルのU.L.コンフォートシステムパッド90と組み合わせたりして使っている。

ご購入はこちらから >>>  

数年ぶりに80リッターのザックを担いで歩くらんぼ~流。
■2日目[その2]
坊ガツル~長者原

 13時10分、坊ガツルキャンプ場を出発。
 往路を使って、長者原に戻る。
 途中、管理休憩舎の建替え工事を告知する看板を発見。
 来るときは若干登山道を外れて歩いてきたので、目に入らなかったらしい。
 看板に書かれた情報によると、3月の中旬には新しい避難小屋が完成するようだ。
 こいつはどうでも他の山屋諸氏の手垢に汚れる前に宿泊しに来なければならない。
 昨日とはうって変わって、長者原までの道のりはぬかるみの連続であった。
 しかし、日陰になっている部分はまだ道が凍っているので何とも気が抜けない。
 14時21分、雨ガ池を通過。
 崩壊地を越え、気持ちのよい樹林帯の中に入ると、林の中まで足を伸ばしてきた観光客とすれ違うようになった。
 途中、枯死したヤドリギを発見。
 手に持って接写していると、前から歩いてきた観光客の方が「それは何ですか?」と尋ねてきた。
 「おそらくヤドリギでしょう」と頭上のヤドリギが密生している枝を指差して教えると、
 「専門家の方ですか?」と再び質問が飛んできた(汗
 15時24分、長者原駐車場に到着。
 今回は装備の力でとても充実した演習となった。
 次回のビバーク演習も同程度の装備で臨み、野営の経験を積んでいこうと思う。
(文・山岡隊員 、写真及び写真説明・山岡隊員)
坊ガツルキャンプ場を出発 坊ガツル避難小屋の建替工事の知らせる看板 復路はぬかるみと凍土の連続だ
坊ガツルキャンプ場を出発 (13:10)
写真は振り返って見た大船山。
坊ガツル避難小屋の建替工事の知らせる看板。3月中旬に完成するようだ。 復路はぬかるみと凍土の連続だ。
日当たりのよい道は氷が解けている。
一方、日陰になっている部分はまだガチガチに凍っていた 雨ガ池を通過 雨ガ池周辺の地面の様子
一方、日陰になっている部分はまだガチガチに凍っていた。 雨ガ池を通過 (14:21)
このへんは特に道がゆるんでいた。
雨ガ池周辺の地面の様子。
このどろどろが雨ガ池の真髄である(^^;
枯死したヤドリギを発見 上を見上げると、たくさんのヤドリギが生えていた 長者原登山口に到着
枯死したヤドリギを発見。
宿主にしがみつく力も失ったようだ。
上を見上げると、たくさんのヤドリギが生えていた。 長者原登山口に到着 (15:24)
今回はとても充実した演習だった。
-らんぼ~流イチ押しの厳選アイテム-
■zamberlan(ザンバラン) フジヤマGT■
軽登山靴の代名詞、ザンバランのフジヤマ。その飾らないシルエットとともに、アッパーとソールとの合わせに最近ではあまり見かけなくなった縫い加工を施したトラディショナルな一足。信頼の持てる堅牢な作りは履いていて安心感がある。らんぼ~流もこの靴を15年以上相棒としている。

ご購入はこちらから >>>  

-らんぼ~流イチ押しの厳選アイテム-
■LEKI(レキ) AGサーモライトアンチ■
トレッキングステッキの老舗レキの衝撃吸収システムを搭載したスタンダードモデル。最近では他メーカーから安価な製品が発売されているが、時に命を預けることのある装備にはある程度の予算をかけておくべき。同社の製品にはさらに軽量のカーボンモデルもあるが、カーボンは一旦傷がつくと脆そうなのでアルミ素材のものが安心。

ご購入はこちらから >>>  

▲ この記事のトップへ      ▲ ページトップへ戻る